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大学と社会(’08) 第14回

第14回は「大学と社会貢献」です.

大学の社会貢献は,学内に集積された資源の開放,つまり大学開放という方法によって行われる.日本の大学が実施している大学開放には,正課教育の開放,機能的開放,人材提供事業,施設開放,産学官連携(受託,共同研究)のおよそ5種がある.

機能的開放の代表的なものに大学公開講座があり,1995年に500校を突破し,いまや全国の国公私立大学のほぼ9割が実施している.

大学開放事業を推進するにあたり,担当する大学教員はどう考えているのだろうか?

上表によれば,生きがいを感じているのは研究活動が最も多く,ついで教育活動である.対して,開放事業に生きがいを感じているのは3割に満たない.

研究,教育,大学開放の3種の活動の相関関係を調べたのが上表である.研究活動と教育活動,教育活動と大学開放事業には,有意な相関が認められた.つまり,大学開放事業は教育活動と互いに影響し合う関係にあるものの,研究活動とはむしろ疎遠な関係にある.

強調部分は私による強調である.

仕事・所得と資産選択(’08) 第15回

第15回は「持続可能な社会と生活」です.最終回です.この講義はラジオでしたが,かなり楽しかったです.

人間は誰も1人では生きてゆけない.人間はお互いに助け合って暮らす仕組みを作り上げてきた.相互扶助やボランティアである.内閣府の調査によれば,人々がチャレンジしている分野のうち,約20%が社会貢献に関するものである.ボランティア活動を行う目的は「人のために役立ちたいため」が最も多く65.4%,次いで「自分自身の成長のため」が55.8%,「様々な人々とのネットワークを深めるため」が42.8%となっている.

人的資産には,個々の人間の能力(個人的資産)と人々が集まって発揮される社会的な能力(社会的資産)の2つがある.個人的資産は,ヒューマン・キャピタルと呼ばれ,自分自身の能力を高め,自己実現を図ってゆくことによって高められる.社会的資産は,ソーシャル・キャピタルと呼ばれ,人と人との繋がりがその源である.内閣府の調査によれば,ソーシャル・キャピタルの豊かな地域ほど失業率が低く,出生率が高いなどの関係が認められている.

総務省の家計調査年報によれば,1世帯あたりの年間寄付金は,1995年の阪神淡路大震災時に5000円台に増加した以外は,1990年以降はほぼ3000円台で推移している.

後半は興味がわかなかったので,まとめない方向で(最後なのにw).

仕事・所得と資産選択(’08) 第14回

第14回は「情報化社会の生活」です.今回から最終回まで,講師が交代です.大藪先生の講義面白かったのに・・・.

新聞,テレビやインターネットで得られるものだけが情報ではない.風の音,鳥のさえずり,山や川の風景,友達とのおしゃべりなど,五感を通じて受け取るもの全てが情報である.情報は人間にとって2つの大きな意味を持っている.

  1. 情報による意志決定
  2. 情報による人間の発達

情報による意志決定とは,次のようなものである.「ある朝,鳥のさえずりで目が覚め,眠い目をこすりながら起き上がった」.これは,1.鳥の鳴き声を情報として摂取,2.朝だと判断,3.起きようと決定,4.起床,という一連の流れを示している.つまり,私たちは,まず情報を摂取して,それをもとに判断し,決定し,行動している.これは理性ともいえるだろう.情報に基づいた理性的な行動は,人間によい結果をもたらす.対して,突発的な行動は,不利な結果を招く.そのため,人間にとって情報は大切であり,多ければ多いほど威力を発揮する.

インターネットの普及は,個人,家庭,そして社会に対して大きな影響を及ぼしている.家族や友達との連絡回数が増える一方で,面と向き合って話す時間は減少している.外出回数や睡眠時間も減っている.知識が増えて個人の能力が向上する一方で,人間同士の直接的な交流は減っている.したがって,人と人とのコミュニケーションが広いけれども薄く浅いものになって,人間関係が稀薄化したり,物事を深く考える能力が低下するなどのマイナス面が懸念されている.

インターネットに固有のリテラシーはほとんどない.情報をめぐる問題は,いずれの情報手段においても基本的には共通であり,そのために備えるべき能力も同じである.インターネットには,無限に近いほど多種多様な情報が存在する.しかも,それらの多くは,混沌とした生の情報である.そのため,インターネットのみならず,あらゆるメディアからの情報を批判的に検討し,本物を見極める能力が必要である.

情報化が進むにつれ,情報格差が顕著となり,その解消が大きな課題となってきた.年齢格差,収入格差,地域格差である.情報化社会における格差の特徴は,格差が格差を加速度的に増大させることである.例えば,若者は最新の便利な機器を活用して多くの有用な情報を獲得できるが,真にそれらの情報を必要としている社会的弱者との格差はさらに大きくなる.また,教育終了後に世に出た技術は,習得されないため,利用するための障壁が高くなっている.また,便利すぎる情報環境が人間の発達を損なわないかという懸念がある.

仕事・所得と資産選択(’08) 第13回

第13回は「生活者を取り巻く新たな経済・社会情勢」です.

内閣府「国民生活に関する世論調査」において「お宅の生活の程度は,世間一般からみてどの程度と思うか」との問いに中流と答える人が1967年に89.2%,その後ほぼ90%と,いわゆる「一億総中流社会」が日本には存在していた.しかし,21世紀に入り,景気が上昇傾向になってから,徐々に貧富の差が現れてきた.所得の再分配が平等かどうかを示す所得再分配調査のジニ係数をみると,1981年の0.314から年々上昇し,2005年には0.387と,不平等化が進行している.

2006年のOECDの対日経済審査報告書の中で,日本の勤労世帯(18~65歳)の貧困率がアメリカに次いで2位となった.また,勤労世代に限らず全国民で見ると,日本の貧困率は15.3%で5位,先進国だけで見ると,アメリカ,アイルランドに次いで3位である.日本の貧困層は高齢者と若者であり,66~75歳の貧困率は19.5%,76歳以上は23.8%に達している.一方,若者(18~25歳)の貧困率は16.6%と高くなっている.ここで,貧困率の定義がテキストにはなかったので,wikipediaで調べた.ここでは相対的貧困率を指していると思われる.

OECDによる定義は等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯員数の平方根で割った値)が、全国民の等価可処分所得の中央値の半分に満たない国民の割合の事。

貧困率 – Wikipedia

消費者金融の利用者は約1400万人,借入件数が5件以上ある多重債務者は約230万人といわれている.サラ金問題などが深刻化したことによって,1983年には貸金業規制法が成立し,出資法の改正,1999年には利息制限法の一部が改正された.出資法での利息制限は1991年には40.004%,利息制限法で15~20%でった.このため,サラ金業者は20~40%未満のグレーゾーンで金利を決めているのがほとんどであった.しかし,商工ローン問題によって,2000年には出資法の上限が29.2%に改正された.ヤミ金融ではトイチ(10日で1割),トヨン(10日で4割),トゴ(10日で5割=1825%)などの高金利で安易に貸し付ける.多重債務に陥った場合,解決方法としては,

  1. 任意整理
  2. 調停による整理
  3. 自己破産
  4. 個人再生手続き

がある.任意整理は,裁判所などの公的機関を利用せずに,私的に債権者と話し合い,債務整理をする方法である.調停による整理は,簡易裁判所の調停委員が債務者と債権者の間を斡旋して,利息制限法等に基づいて合意を成立させる方法である.これは,毎月一定額を返済できても,支払い不能に陥る可能性がある場合に利用する.個人再生手続きは,個人版民事再生手続きである.自己破産は,債権者に生活再建と再出発を与える最終手段である.自己破産件数は2005年で約18.4%である.自己破産した人の割合は,30歳代が24.6%と最も多く,50歳代の23.0%,40歳代の21.8%,20歳代の13.7%と続く.破産理由は生活苦・低所得が25.9%と最も多く,負債の返済が12.49%と続く.負債額は200~400万円が29.1%と最も多いが,次に1000~5000万円が20.0%と続く.

戦後の混乱から抜け出し,日本特有の総中流平等意識から,急速にアメリカ的競争社会へと向かっているが,「富む者はますます富み,貧しい者はますます貧しく」なる社会になってきている.「努力する者が報われる」社会は競争意識を高め,生産性が上昇するため好ましいが,近年は「努力しても報われない」社会になりつつある.また,病気や事故などの場合でも,社会保障に頼れない傾向を生み出している.弱者切捨ての格差社会は,富裕層にとっても幸せな社会とは決していえないはずである.

仕事・所得と資産選択(’08) 第12回

第12回は「高齢者世帯の生活と家計」です.深刻です.

高齢化社会とは高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口)が7~14%未満の間にある社会を指すが,高齢社会になると高齢化率が14%を超えた社会を指す.2025年には高齢者が3人に1人の超高齢社会を迎えるといわれている.2055年には85歳の人口が最も多くなると推計されている.2055年の平均寿命を男性83.67歳,女性90.34歳と仮定すると,65歳以上の老年人口は40.5%にもなると予想されている.また,15~64歳の生産年齢人口が51.1%,0~14歳の年少人口が8.4%と予想されている.

国民年金の支給額は物価スライドするが,年金額は1人月額66000円である(2007年).老後に必要な生活費は,無職世帯の場合,夫婦世帯で27万円以上,単身世帯で20万円以上である.余裕ある老後を過ごすためには夫婦で月30万円以上は必要となる.年金の支給は65歳からなので,60歳で退職した場合,5年間は収入がないため,年金の支給を受けるまでに夫婦で1800万円が生活費として必要になる.年金が支給されても,国民年金だけでは夫婦世帯で11万円,単身世帯で7万円も足りない.つまり,平均寿命まで生きるとすれば,死亡までに4000万円の貯蓄が必要となる.

遺言書では,相続人以外の人に財産を与えることも可能となる.遺言書には普通方式と特殊方式があるが,一般には普通方式を指す.普通方式には,

  1. 自筆証書遺言
  2. 公正証書遺言
  3. 秘密証書遺言

がある.自筆証書遺言は無効となるものも多いため,公証人が作成する公正証書遺言が好ましい.相続税には基礎控除があり,5000万円(+1000万円×法定相続人の人数)である.わかりやすく言えば,遺産は5000万円にして,生前贈与してしまうのが良いように思える.生前贈与の基礎控除額は110万円なので,ごにょごにょ.葬儀費用はピンキリであるが,日本消費者協会の調査では平均236.6万円,万円となっている.

全国の消費生活センターに寄せられた相談のうち,契約当事者が70歳以上の相談件数は毎年増加し,2005年には14万人に達しており,相談全体の11%を占めている.契約当事者が70歳以上の上位販売方法や手口は,

  1. 家庭訪問販売
  2. 電話勧誘
  3. 次々販売
  4. 販売目的隠蔽
  5. 点検商法
  6. SF商法(新製品普及会の略)

となっている.内閣府では,高齢福祉関係団体,消費生活関係団体などと協力して,高齢者見守りネットワークを作っている.また,高齢者を悪質商法などから守るために,成年後見制度が制定された.成年後見制度とは,申し立てによって,裁判所が物事を判断する能力の不足の程度に応じて選任する保護者によって本人を保護する制度で,補助,保佐,後見の3つがある.これらによって,保護者の同意を得ずに結んだ契約を取り消すことができる.あらかじめ公正証書によって保護者(任意後見人)になってもらう任意後見制度もある.

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