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SAJスキーバッジテスト2級を受けてみた
- 2013年03月11日
- 参加報告
幼少期から長年スキーを続けてきましたが,スクールなどで学んだことはなく,完全な独学です.それなりのスキルはあると自負しているのですが,それが客観的にどのくらいなのかを知りたいなと思っていました.社会人になってから,スキーも年に1回行けるか行けないかくらいになり,体力・筋力の衰えを感じ始めてきたので,そろそろ受けなくてはと思い,ついに初めてSAJのスキーバッジテストを受けてきました.
いざ,みやぎ蔵王えぼしスキー場へ
バッジテストはいつでもどこでもやっているわけではありません.そもそもSAJなので,SAJのスクールがあるスキー場じゃないとダメです.さらに,バッジテストの開催日を狙わないとダメです.長年受けてこなかった理由の1つがこれです.なかなか日程が合わないのです.今回は行ける日に開催しているスキー場に行くという手段で挑みました.候補は群馬の川場スキー場と宮城のみやぎ蔵王えぼしスキー場でした.色々な事情で,えぼしに行きました.土曜日に練習して,日曜日に検定という日程で挑みました.
ところがどっこい,そうは問屋が卸さない.猛烈な低気圧が北海道・東北方面にやってきたらしく,天候は大荒れとのこと.太平洋側だし東北の中でも南側だし,そもそも晴れてるから平気だろうと思ってスキー場に行ったところ,晴れてるんだけど,猛烈な強風でリフトが止りまくり.最初の写真が土曜日のえぼしスキー場ですが,良い天気ですよね.これ,リフト止ってるんだぜ.
仕方がないので,近くにある(20kmも離れてるけど)すみかわスキー場に移動したところ,条件は同じでこちらもリフト停止.こっちは雪上車による搬送をしてくれてましたが,焼け石に水ですよね・・・.ということで,土曜日は温泉に入って酒をあおるという単なる休暇になりました・・・.
日曜日も風が強い予報で,ホテルからスキー場までの送迎バス(大型観光バス)に2人だけというダメそうな気配を醸し出しながら向かいました.もちろんリフトが止りまくってましたが,何本か動いてて,スクールに行ったら「やる」ということなので,2級の受験申込をして,ゼッケン52番を与えられました.
スキーバッジテスト2級
スキーバッジテスト2級について簡単に説明します.2級は以下の3種目を検定します.
- パラレルターン大まわり(ナチュラル)/中急斜面
- パラレルターン小まわり(整地)/中~中急斜面
- フリー滑降(ナチュラル)/総合斜面
各種目100点満点で,合計185点以上で合格となります.つまり,1種目65点が基準となります.なお,2級というのはポンと受けられる最上級の検定です.1級は2級保持者じゃないと受験できません.
検定開始
10時にスクール前集合とのことでしたが,その頃には強風に加えて雨も降ってきました.今回の2級受験者は5名でした.検定バーンは(たぶん)石子ゲレンデでした.強風で低速運転のリフトを3本乗継いで着く頃にはびしょ濡れです.検定バーンは標高が上がったため,雨ではなく雪に.つまり,猛吹雪・・・.困難しかないです・・・.
2級の検定は講習内検定なので,検定内容に沿った講習を受けながら検定を行います.今回は以下の順番でした.
- 大回り講習
- 大回り検定
- 小回り講習
- 小回り検定
- フリー滑走検定
本来であれば,フリー滑走の講習もあったはずなんですが,天候悪化とリフト停止というかスキー場閉鎖の影響を受けました.大回りをやっている頃から,吹雪どころか地吹雪やブリザードになり,さらに風が強くなって,検定員の説明を聞いていると吹っ飛ばされるというわけのわからない状態に.最後のフリー滑走の頃にはホワイトアウトして,検定員がチェックポイントまで降りて滑走指示を出すんですが,指示が見えないくらいには真っ白.スキー場じゃなかったら遭難するレベルです.
結果と講評
そんなこんなで大変な状態になりながら,一応検定を終えました.講評としては,自分で苦手だと思っていることの全てを指摘されました.受験前は「2級は普通受かるだろ」って思っていましたが,想像以上にシビア(というか誤魔化せない)でした.特に,苦手とする大回りは課題が山積みです.身体が弧の内側(山側)に倒れている,つまり内傾が強すぎると指摘されました.これは自覚があります.というか,自己流なので,カービングターンで弧を最大限に活かすとなると内傾にすべきだと思うのですが,単純にそうではなく,弧を使いながら軸足の上に頭を持ってくることで体重が乗るようになるそうです.なるほどなるほど.といいたいところですが,実は無理なんです.もう無理なんです.筋力・体力的にもう無理なんです・・・.ターン中に足がもげちゃいます.それから小回りについても,上下動が滑らかではないと評されました.滑らかに上下動させないと立つときに体重が抜けてしまってエッジが効かないんだそうです.確かに.これはリズムの問題なので対応可能でした.
ということで,結果は以下の通り.
- 大回り 64
- 小回り 66
- フリー 65
- 合計 195
2級はギリギリで合格でした.でも,今回の合格は天候不良のお情けだと思っています.課題は山積みです.課題が明確になったので,次シーズンの練習課題もできて,これからのスキー人生に新しい目標ができました.なお,今回受験した5名全員が合格でした.おめでとうございます!
まとめ
みやぎ蔵王えぼしスキー場で,長年の夢だった2級のバッジを取得しました.次は1級になりますが,大回りよりも苦手な不整地があるので,困難です.色々と学ぶところが多かったので,1回はスクールで学んでみようかなとも思いました.
TOKYO IBD第22回医療講演会「炎症性腸疾患の病態と最近の治療の傾向」
- 2012年09月30日
- 参加報告
久しぶりにIBDの勉強会に行ってきました.昨年12月に行われた横浜市立大学市民医療講座以来です.今回はTOKYO IBDの第22回医療講演会を聴講してきました.今回の講師は聖路加国際病院消化器内科の福田勝之先生でした.簡単にレポートしたいと思います.講演内容はIBDだったので,UCもCDも説明されていましたが,UCの話題についてのみ書きます.
全般的な知識
UCの重症度として,びらん型,潰瘍形成型,深掘れ型,広範粘膜脱落型の順でひどくなります.私の場合,初発時のTCFでは潰瘍形成型まで進行していたので,やはり中等症で妥当そうです.2009年度末でCDが32187人,UCが121319人だそうですが,臨床調査個人票を書いても出さない人もいるらしく,患者実数はもっと多いだろうとのことでした.患者の重症度は,軽症が46.4%,中等症が35.5%.臨床経過は,再燃寛解型が71.3%,初回発作型が18.4%,慢性持続型が8.4%であり,高寛解率を示しますが,再燃を繰り返すのが大半であることがわかります.私も再燃寛解型です.ここで注意したいのは,初回発作型です.UCは治療法が未確立なので,初回発作のみに見えても,それが本当に「治った」のか,「落ち着いているだけ」なのかは,「医学的に区別できない」と説明されていました.
治療
治療における基本方針としては,早急に寛解状態に移行させることが大事で,その際には完全に炎症を消すのが大事であると強調していました.医学的エビデンスがあるわけではないようですが,初発時に正しい治療でキッチリと炎症を消し去った方が後々の治療成績が良いようです.長いこと炎症をくすぶらせておくと「記憶してしまう」のような表現で説明していたように思います.UC患者ならわかると思いますが,多少の炎症があっても,便回数が減ってくると血便でも「まいっか」って思うようになります.これが良くないらしく,きっちり消すべきだという考えでした.
基本的に5ASAを使いますが,ペンタサ2gでくすぶらせながら寛解維持するくらいなら,4g全開量で寛解維持させた方がいいとのことでした.寛解維持量は2gにこだわらず,炎症をコントロールできる量を使うべきという考えでした.で,ペンタサ4gでコントロールできない場合に,ステロイドを適切な量を短期に使う方針でした.そもそもステロイドには寛解維持効果はないので,漫然と使ってはならないとのことでした.
5ASAの副作用についても触れていて,ここでは新しい知見を得ました.5ASAの副作用は投薬後の早い段階で出現し,2週間程度で副作用がでなければ,副作用はないと考えてもよいということは知っていたのですが,さらに,「5ASAの副作用は用量依存性がない」とのことでした.つまり,2gで副作用がでなければ,4gでも副作用はでないということらしいです.こういうこともあって,寛解維持期においても全開量を使うようです.妊娠中についても,安全な薬は確実に飲むように指導しているそうで,5ASAは普通に飲んでもらって,ステロイドも20mgくらいまでは使えるとのこと.それからGCAPですが,初発中等症びらん型は効果が期待できるようです.5ASAとステロイドの併用でコントロールできない場合,プログラフを使うかレミケードを使うかという指針については,明確な答えが出ていないそうです.
今回の講演ですごく印象的だったのは,免疫調整剤シクロスポリンを使っているという話があったことです.確かに,重症UCに対してのシクロスポリンは推奨グレードAになっていますが,そもそもシクロスポリンはUCに対して保険適用外なので,驚きました.治験扱いということなのかしら・・・.お金の話はおいておいて,ステロイド依存性やステロイド抵抗性でなかなかコントロールできない重症例に対して,シクロスポリンは「切れ味が鋭い」そうです.この表現はレミケードでも良く耳にする表現です.かなりの速効性が期待できるということでしょう.
UCに対するレミケードの話も少し出ましたが,最重症例には効かない(効果が弱い?)らしく,シクロスポリンやプログラフといった免疫調整剤を使うようです.また,シクロスポリンが期待ほどの効果をあげない場合は,手術を考えるそうです.
UCの食事制限
今話題のUCに食事制限は必要か否か論ですが,患者の実感通りで,UCに対しての食事制限は必要ないとのことです.試してみて,ダメならダメ,平気なら平気と自分で色々試せば良いようです.ただし,CDは確実に食事療法の効果があり,小腸型は特にそうだそうです.一方で,福田先生はかなり患者に近い立場をとられるようで,「好きな物を食べれば良い」と.治療の目的は「通常の生活ができるようにする」ことであり,当然ながら食事も含まれるから,治療の選択肢が増えてきた今なら,多少は・・・との思いがあるようです.「食べ過ぎで再燃したとしても怒りません」とのことでした.いいひとだー.
講演会後の交流会でも同じ話題がでましたが,UCの場合,食事制限はそれほど効果を示さないけど,食事制限によるストレストリガーで再燃するので,やらない方がいいという話も.私の実感とも一致します.ただ,当然のことながら,個人差がありますので,何でも食べて良いというわけではありません.人それぞれです.
まとめ
患者会の講演会にいらっしゃる先生方は,当然ながら,患者に近い立場で良く理解してくれる先生方ばかりです.慢性疾患の場合,患者と医者の距離はすごく重要だと思うので,一緒に病気と闘っているという実感が持てる主治医は素晴らしいと思います.
Interop Tokyo 2012
- 2012年06月15日
- 参加報告
6月12日から15日まで幕張メッセで開催されていたInterop Tokyo 2012に行ってきました.お目当てはもちろんNICTの新兵器DAEDALUSです.
こちらが噂のコンパニオンも抽選会もないのに,人集りができるNICTブースです.NICTは数年前から,Interopでnicterを展示しており,毎年人気のブースです.まずは従来の可視化ツールをご紹介.
いわゆる普通のnicterです.かっこいいです.
こっちは昨年投入されたNIRVANAです.
そしてこれが新兵器DAEDALUSです.クゼの電脳にタチコマがマスクアレイを注入しながら侵入する感じです.方向としては逆ですけど・・・.
ちょろっと解説すると,中央の球体がインターネットで,この球体でIPv4アドレスは網羅している・・・んだったと思います.その衛星軌道上に回っているのが監視対象ネットワークで,黒い部分がダークネット(未使用IPアドレス)で色が付いている部分がライブネット(使用中IPアドレス)になってます.んで,なんらかの攻撃(異常)が観測されると「警」が表示されます.点滅している「警」が現在進行中で,赤い「警」は過去に観測されたものだそうです.ちなみに,「警」が前面にドーンと出てきたときは,今まさにその瞬間に観測したものだそうです.レアです.
という,ある程度の前提知識を持っていただいて,撮影してきた動画をどうぞ.
こんな感じで,近くでこの映像が流れていたら,ずっと見続けてしまう可能性があるデフラグ級に危険な代物です.自宅警備員を名乗れます.さて,こんなかっこいいツールですが,実はかっこよさを極限まで追求してしまったため,自由度が無茶苦茶高い仕様になっています.例えばこんな感じ.
パケットの軌跡を黄色に変更してみた例.
特定の条件に該当するものを赤で表示させたもの.
445ポートへのパケットを緑でハイライトした例.などなど,ポート番号指定やらIPアドレス指定やら色々と条件指定してカスタマイズ可能です!超実用的!(当たり前)
これは他のものとはまったく違うものを表示していて,パケットフローで,どのぐらいの流量があるかを示している図.こんなこともできるんです.そうDAEDALUSならね!
まとめ
nicterの新型可視化ツールDAEDALUSはかっこいいだけではなく,実用性抜群です.ネットワーク監視センターには必ず配置したいツールです.ぶっちゃけLACのJSOCにあるべきツールじゃないかななんて思いました.さて,来年はどんな可視化が実現されるのでしょうか・・・.
横浜市立大学市民医療講座「炎症性腸疾患の基本と内科・外科治療」
- 2011年12月11日
- 参加報告
12月11日に横浜情報文化センターで行われた横浜市立大学市民医療講座「炎症性腸疾患の基本と内科・外科治療 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)のここが知りたい! ~基礎知識から最新治療、手術まで~」を聴講してきたので,レポートしたい.市民講座になっているのだが,内容はものすごく専門的で,高度な内容になっており,医療関係者とIBD関係者以外は置いてけぼりにされてしまうくらいの充実した内容でした.製薬メーカと協賛団体の配付資料もご自由にお持ち下さい状態になっていたので,全部もらってきたのだが,実に豊富で,潰瘍性大腸炎とは?のようなものから,LACP/GCAP,レミケード/ヒュミラまで至れり尽くせりの充実具合でした.先日の千葉大IBD教室もすごいと思ったが,今回はさらにすごかった.やはり,専門医療機関主催の勉強会はすごいっす.
以下にレポートしますが,UCを中心に,私が知らなかったことをまとめています.知っている知識でも広く知らしめるべき知見については言及します.正確さには注意を払いますが,誤りが含まれていることもあります.講演中にも講師から言及がありましたが,IBDは原因不明の難病ですので,現在の学説が絶対的に正しいということはなく,現時点における主流だというだけです.
横浜市大病院ってすごいの?
横浜市大病院は日本でも数少ないIBD専門の診療科として,IBDセンターを開設している.IBDセンターでは内科と外科がシームレスに連携し,IBD治療を進めている.つまり,平たくいえば,IBDに関しては最先端の情報を豊富に持っている数少ない医療機関ということである.
IBDとは
IBDはInflammatory Bowel Diseasesの略で,原因不明の慢性・再発性腸炎の総称で,潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)が含まれます.安倍元首相はUCですし,アメリカ大統領にIBDが多い旨の言及がありました.CDは近年猛烈な勢いで患者数が増えており,先10年で5倍になると予測されているそうです.日本の有病率は欧米諸国比でまだまだ低いが,急速に増加している.CDは水洗トイレがあるなどの清潔な環境下で発症率が高いという調査があるらしいのですが,日本でそれは・・・.
日本人に多い消化管疾患としては,胃・十二指腸潰瘍,胃がんなどがあるが,これらはヘリコバクター・ピロリ菌が重要な原因であることが判明しており,今後減少が期待される.対して,食の欧米化に伴い,逆流性食道炎,虚血性腸炎,大腸がん,過敏性腸症候群(IBS),IBDなどが増加している.歴史的にも統計的にも,感染症が減ると,免疫病が増える傾向にあり,衛生状態がよくなるとなりやすい病気らしいです.50年前は難病であった赤痢,結核などは原因菌が特定され,特効薬が開発され,現在では完治できる病気である.IBDに関しても,今後原因が特定されれば,将来的に完治が予想される(今のところ,原因を特定するに至っていない).
典型的な症例であれば,大腸内視鏡の画像を見て,UCとCDは簡単に鑑別できそうです.そのくらいに,UCとCDは違います.毎度毎度思うことですが,CDやべぇ.UCの内視鏡画像で,白くなっている部分が潰瘍なんだそうです.オレの検査結果を見ると,あーあって感じですね.
内科的治療
IBDの内科治療は大きく分けて,以下の4種類になります.
- 薬物療法
- 栄養療法
- 白血球除去療法
- 内視鏡的治療
薬物療法には,抗炎症治療として5ASA(ペンタサ,サラゾピリン,アサコール),免疫抑制治療としてステロイド,免疫調整剤,生物学的製剤(レミケード,ヒュミラ),などがある.内科治療の選択は目的によって異なり,寛解導入と寛解維持に分けられる.例えば,イムランは再発予防であり,寛解維持には使えるが寛解導入には使えず,ステロイド,LCAP/GCAP,シクロスポリンはその反対である.
基本的に5ASAは主力治療薬で,寛解導入から寛解維持まで適用され,継続が原則である.5ASAの副作用は多くが2週間程度で現われ,遅いものでも数か月で現われるため,一定期間で副作用が出なかった場合,その後に副作用が出ることは稀である.アサコールは凹んでいる箇所に溜りやすく,つまり潰瘍の凸凹に引っかかりやすいため,効果が出やすいとのこと.5ASA製剤はDDSが工夫されており,体内吸収が少ないため,妊娠中でも利用可能であることが調べられている(後述).また,がん抑制効果があり,発症率を半分に下げる効果があるらしい.5ASA製剤については,ペンタサとアサコールがあり,現在国内治験が行われているものとして,1日1回内服のリアルダと1日1回内服で顆粒製剤のサルフォークがあります(私見:所詮は5ASAだと思います).なお,講演ではTCF検査中に発見されたペンタサやアサコールの映像が紹介されたが,実に興味深かった.あいつら効いてんのかなんなのかわからんけど,ああやって映像で見せられると「あーちゃんと仕事してんじゃん」って思えました.
食事療法,栄養療法についてはCDに対して有効ですが,UCには効果は無いようです.特に寛解期においては全くといって良いほどどうでも良いようです.ただし,患者の実感としてはやっぱりあれなので,色々試してみて,大丈夫なものは大丈夫,ダメなものはダメ,と自分で決めるべきだと思います.で.CDに対して栄養療法は有効で,特にエレンタールが良いようです.エレンタールはタンパク質を含まないアミノ酸の栄養剤で,そもそもは宇宙食として開発されたんだそうです.動物実験の結果では,エレンタールはステロイドと同程度に腸炎を抑制するようです.これは,エレンタールに含まれるヒスチジンというアミノ酸が炎症抑制効果を発揮するんだそうです.同じアミノ酸だからって,アミノバイタルを飲んでもダメだそうです.桁が違うのだよ桁が.
ステロイドは適切なタイミングに適切な量を使うならば,ゴールドスタンダードな治療法です.非常に良く効く反面,元々生体内でホルモンとして作用するので,副作用が多いという問題があります.ステロイドの長期投与や抵抗性や依存性などで,ステロイドを中止する工夫として,白血球除去療法,免疫調整剤,レミケードなどがある.
白血球除去療法(LCAP/GCAP)は透析のようなもので,血液を取り出し,活性化白血球のみを除去して,体内に戻す方法で,内科治療で唯一なにかを取り除くというアプローチの治療法である.そのため,副作用はほとんど無い.有効性はUCで60%,CDで50%だそうです.うーん.当たるも八卦当たらぬも八卦.ちなみに,LCAPは13万円/回だそうです.
免疫調整剤としては,イムラン,アザニン,ロイケリンなどの6MPがあり,効果は2ヶ月~1年程度かけてゆっくりと出現し,IBDでは2~5年間服用し,その後に中止を判断する.日本人のIBDでは効果が高いという報告があり,高い寛解維持効果が得られる.タクロリムスも高い寛解導入効果(70%),重症に半数有効,2週間で効果が出現する速効性,とかなり有効なようです.
CD向けの話題ですが,小腸の検査手段として,ダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡があります.狭窄に対しては,バルーン内視鏡で開いたりもできるそうです.
ここまでで印象的だったのは,これら内科的治療は国民皆保険である日本ならではの充実度だそうで,タクロリムス,LCAP,ダブルバルーン内視鏡による治療を受けられるのは日本だけだそうです.TPPでどうなっちゃうんでしょうね.
外科的治療
治療の基本は内科治療であり,外科療法は原則として内科療法で改善しない場合に選択する.UCの手術適応は重症,難治,がんのいずれかに分類され,手術率は5%~25%程度である.よく見かけるUCの癌化率や累積手術率はデータが古く,特にアメリカのものは5ASAが使われる前のものであり,5ASAによるがん抑制効果が期待される現在においては,癌化率や手術率はもっと低くなるのではないかとのこと.
この後の説明には,大腸全摘や人工肛門,CDに対する外科治療がありましたが,ちょっとあれなので,割愛.この先生は完全に外科視点だとわかる話っぷりでした.しかも,鮮明な写真付で,結構あれでした.貴重な資料ではあると思いますが・・・.痔瘻こわい.
Q&A
よくある質問と会場からのQ&Aの一部を紹介します.
Q:どんな仕事を選べばいいか?
A:定期通院ができ,病気に理解がある仕事.夜勤はリスクが高い.ストレスがない仕事はない.就活時に病名を明かすかどうかについては,聞かれたら言えばいいという程度.
Q:妊娠は?
A:2008年のガイドラインで妊娠は問題がないとなっている.横浜市大の2000~2009年に,薬を飲んだまま,妊娠出産したケース(100人以上)を紹介.早産や少し小さく産まれる(SGA)は多少あるが,奇形はない.活動期だとリスクが少しあるが,ほとんど問題ない.
Q:UCは遺伝か?
A:遺伝病ではない.一卵性双生児であっても,必ずなるわけではないので,遺伝だけでは説明できない.家族内遺伝は数%であり,他の遺伝病に比べて低い.他の環境因子があると思われるが,不明.
Q:ストレスは?
A:ストレスについては学説でも両方あり,意見が分かれている.ストレスにより免疫低下することは明らかにされているが,ストレスがUCの直接原因とは考えられない(そうなの!?).ストレスがトリガーにはなり得る(って言ってた気がする).
Q:内視鏡検査を受けていないのだが
A:大腸内視鏡検査は大腸がんのサーベイランスであるので,1年に1回は受けることを薦める.特定疾患の更新時に大腸内視鏡検査があるのは,大腸がんがないことを確認するのが更新条件となっているため(って言ったような気がした).
Q:漢方は効果があるか?
A:柴苓湯は効果があるが,非常に強い漢方であり,副作用に注意が必要.大建中湯は近年注目されており,CDに効果があるらしく,アメリカで大規模スタディが行われている.
Q:エレンタールがまずい
A:栄養療法は効果があるので,飲みやすくなるように企業は頑張るべき(べき!)!エレンタールがまずいのは,アミノ酸が入っているからで,アミノ酸が臭い.
Q:便回数が多いのだが
A:直腸に便が来るとそれに反応して便意を催す.活動期においては,直腸が炎症を起こしていると,それを便と誤判定し,便意を催し,暴発する.
Q:特定疾患の今後は?
A:このままではいかない.特定疾患予算のほとんどはIBDが使っている.軽症ははずされるのではないか?高額な治療(レミケードやLCAPなど)は残るのでは?(これは講演者の私見なので,そうなるとは限りません)
Q:痛み止めは?
A:安全性が確認されているのはカロナールのみ.
Q:薬を飲み忘れたらどうする?
A:ステロイドは飲まないと影響が出るので,きっちり飲む.5ASA,イムランは飲み忘れたら飛ばして,次から飲む.
Q:メモ無し(新しい治療法はないのか?かな?)
A:大腸の細胞を取り出して,正常な細胞を培養し,大腸に戻すと良いという最新の研究がある.医科歯科大のグループがこれから発表する.
まとめ
専門医療機関が主催しているだけあって,市民講座とは思えないハイレベルな内容でした.資料も充実していて,良かったです.特に,国崎玲子先生の話が大変に素晴らしく(内科の先生だから?),最後の小話は涙無しでは聞き遂げられないものでした.
CEATEC JAPAN 2011
- 2011年10月04日
- 参加報告
10月4日から8日に幕張メッセで開催されているCEATEC JAPAN 2011に行ってきた.今年も特別招待券を頂くことができましたので,特別招待日の4日に行って参りました.特別招待券はKDDI株式会社さまより頂戴いたしました.明日以降に行かれる方もいらっしゃると思うので,簡単にレビューします.
雑感
例年に比べて,各ブースが縮小している気がします.そのため,通路が広めに感じます.ホールの端っこの方に,ご当地グルメフードコートが準備されていて,食の楽しみもあります.展示のトレンドとしては,4K2Kテレビ,ワイヤレス充電/給電システム,HEMSといったところでしょうか.
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