- 投稿: 2011年12月25日 13:48
- 更新: 2011年12月25日 13:48
- 教育
放送大学では初めてとなる面接授業を急遽受講することになったので,その記録を簡単にまとめておく.
実験1 大きさの錯視
本実験では幾何学的錯視についてエビングハウスの実験の追試を行う.標準刺激における中心図形と条件図形との大きさ(面積)の比率が1:1,1:2,1:2.25,1:4,1:6である5条件を設定した1要因参加者内計画として実験を実施した.実験参加者22名より実験結果を得た結果,中心図形の周辺を大きな図形が囲む場合に,中心図形が小さく知覚される傾向が見られた.一方で,条件図形が大きくなっても,その変化量は錯視量に大きな差を与えない結果が得られた.本実験結果より,エビングハウスの幾何学的錯視の実験結果は支持された.
実験2 印象形成
本実験では印象形成についてアッシュの理論が支持されるか否かについての検証を行う.アッシュはゲシュタルト心理学の立場から,全体印象は個々の特性の単なる合計ではなく,個々の特性を超えた全体(ゲシュタルト)であると主張し,全体印象の成立には個々の特性が均等な重みで寄与するのではなく,中心的機能を果たす特性(中心特性)とそうでない特性(周辺特性)があることを指摘した.本実験では特性語のリストに,「暖かい」という語が含まれる条件1と,その代わりに「冷たい」という語が含まれる条件2の2条件を設定した1要因参加者間計画である.実験参加者22名より実験結果を得た結果,条件1と条件2の間に有意な差が認められた.本実験結果より,中心特性の違いにより印象形成は違っており,アッシュの理論は支持された.
実験3 自由再生による記憶の系列位置効果
本実験では系列位置効果が見られるかを検討し,妨害課題が親近生効果に及ぼす影響を検証する.系列位置効果には,最後の方の項目が最も良く再生される「新近性効果」と最初の項目が再生されやすい「初頭効果」という現象がある.記憶の二成分モデルによれば,初頭効果は長期貯蔵庫から,新近性効果は短期貯蔵庫から得られる記憶と考えられる.そのため,項目提示後に妨害課題を行うことになると,短期貯蔵庫に記憶を保っておくことができなくなるため,新近性効果は消失するとされている.本実験は項目提示直後に妨害課題がある条件群とない条件群の2条件群を設定した1要因参加者間計画である.実験参加者21名より実験結果を得た結果,妨害課題がある条件群は親近生効果が確認されるのに対し,妨害課題がない条件群は新近性効果が現れなかった.また,両条件群ともに初頭効果が確認された.
実験4 要求水準
我々は日々の生活の中で,様々な目標を設定して行動している.例えば,試験を受けるにあたって満点を目標するなどの,行動するにあたって設定する目標の水準を要求水準という.要求水準の型は大きく「理想水準型」「最低水準型」「現実水準型」「混合型」の4つに分けられる.本実験では,要求水準が課題による成功経験,失敗経験とどのような関連を持つかを調べるために,要求水準と結果の差である「達成差」と,結果と次の要求水準の差である「目標差」の関連,および「達成差」と「満足度」の関連について調べる.本実験の結果より,「達成差」の正負の比率によって,「目標差」の正負の比率に有意な差がみられ,また「達成差」の正負の比率によって,「満足度」の比率に有意な差がみられた.また,教室全体としては「最低水準型」であることがわかった.