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仕事・所得と資産選択(’08) 第10回

  • 投稿: 2010年12月26日 01:40
  • 更新: 2010年12月26日 01:40
  • 教育

第10回は「教育と子への投資効果」です.

厚生労働省によると,不妊治療を受けている人は28.5万人,不妊に悩む人はその5倍はいるといわれている.不妊治療にはタイミング法,体外受精,顕微授精がある.しかし,不妊治療は保険が適用されない.一般に人工授精では1~3万円,体外受精は20~35万円,顕微授精は30~40万円もかかる.朝日新聞によれば,治療費の平均は153万円であった.厚生労働省は不妊治療に関する助成金(特定不妊治療費助成事業)を設けている.対象となる治療法は体外受精および顕微授精であるが,給付は1年度あたり上限1回10万円で,通年2年支給される.ただし,夫婦合算の所得ベースで730万円未満という所得制限がある(2007年4月).

妊娠や分娩は健康保険の対象外のため,検診料は10~12万円といわれている.2007年4月からは妊娠8,20,24,30,36週前後の5回は検診料が無料である.出産にかかる総費用は66.6万円である.ただし,健康保険制度から,出産育児一時金が35万円支払われる.また,女性が産休を取得する場合,健康保険から出産手当が支給される.欠勤1日につき標準報酬日額の2/3が勤務先が加入している健康保険から支給される.

育児費用は人それぞれであるが,一般に月12000円が目安である.これにはミルク代,おむつ代,食事代,洋服代が含まれている.ほ乳瓶やベビーカー,ベビーベッドなどの育児用品は含まれないので,購入する場合は20万円,レンタルの場合で約半額である.

幼小中高大は省略.

教育費は1人1000万円以上かかる.このため,子どもの出産自体を考え直す人もいるほどである.これほど高額な費用を何の準備もせずに出費できる人はほとんどいない.多くの人は子どもを出産した時から,こども保険などで準備を始めている.こども保険とは,親に万が一のことがあったときに,それ以降の保険料は免除され,祝い金や満期金は契約通り受け取れる保証が付いている保険商品を指す.

教育費は投資の中でも,自分以外のものにその投資効果が出る,特異な投資である.一般の投資と異なるのは,人間に投資するため,意志を持った人間次第で投資効果が異なる点である.また,投資効果がすぐにわからないのも教育投資ならではである.教育投資はかなりの長期にわたるため,すぐに経済効果は現れない.また,教育とは人間形成を目的としているため,経済的効果はなくとも人格者を育てたという人的効果もある.

経済が不安定な時代だからこそ,遺産が残せない,あるいはお金の価値が変わるため,経済で残すのではなく,教育として子どもに財産を生前分与しておくと考えることもできよう.

強調部分は私による強調である.

以下は私見.まさにこの通りで,教育効果がすぐに得られるというのは薄っぺらい教育である.深い教育は人格形成に係わるので,すぐには効果が見られないのが普通である.良くある例で言えば,卒業生が数年後に恩師の元を訪れて「あのとき先生に言われた○○が今になってわかるようになりました」とか,「さんざん叱られてうぜぇと思ってたけど,社会に出たら誰も叱ってくれない.叱ってもらえるってことはすごく大切だってわかりました」とか.大学のわずか4年の在学中になにか効果を顕在化させたいなんて,薄っぺらいですよ.ましてや,研究室に在籍する1年やら3年程度の間に成果を出させようとせっせと何かを試みようとする教育者らしからぬ大学教員がいるのは,教育機関として残念な限りである.もちろん,大学生活(または大学院まで含む)の集大成としての成果物を出したいと考えるのは,工学としては至って自然で,それは私もそうしたいところである.というか,すべきだと思う.しかし,それがゴールやマストではないと思う.本質的には,その学生の将来を見据えた全人格的人間形成を目論んだ指導をするべきだと思う.そして,それはそんなに簡単なことでも,システマティックにできることでもない.だから,教育はそんなに簡単なものではないと何度も(ry.

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