- 投稿: 2011年05月02日 18:45
- 更新: 2011年05月02日 22:14
- 教育
今学期受講している4科目のうち2科目目となる心理臨床とイメージ(’10)を全講義聴講し終わった.奥深い講義だった.臨床心理士とか心理療法士とかすごいなと思った.なれるとは思えない.以下は簡単にまとめ.
イメージ
イメージとは,絵画,造形,夢といったもののみならず,クライエントの語られる心的現実もまたイメージそのものであり,重要な意味を持っている.イメージは,客観的現実よりも,その人の心的現実を,その人自身をより雄弁に語っているとはいえないだろうか.
錯視
同じものも,どういう環境,どういう文脈の中で見るかによって,異なって見えることが示されている.私たちは眼前のものを見ているのでありながら,こうした知覚のレベルでさえ,それまでの知識や経験が関与しているのである.私たちはものを「目で見ている」と思っているが,「脳で見ている」ということもできる.
絵画や造形と心的現実
「思春期」を描いたムンクは「カメラはそれが天国か地獄ででも使われるのでなければ,絵の具とパレットにはかなわない」といったという.シャガールもまた,空想の絵を描いたといわれるのを嫌って「私は現実を,心的現実を描いたのだ」と語ったという.
多くの国の昔話の共通性
神話はある時ある場所での出来事として語られてきたのに対し,御伽噺は昔々あるところの出来事として語られてきた.その意味で神話よりも昔話・御伽噺の方がより普遍的な主題を扱っている.
退行現象
エネルギーが自我から無意識に流れ出したとき,自我の用いることのできるエネルギーは枯渇し,人は退行現象を示す.しかし,ユングは退行を病的なものと限らず,むしろ創造的なものを育むために必要な過程であることを指摘している.
ユングの自己規律
- 現実との強固な絆を保っておかなければならない.
- 無意識から来るメッセージを1つひとつ吟味して,これを可能な限り意識の言葉に翻訳する.
- 無意識の与える掲示をどこまで行為に移すことができ,日常生活に組み込むことができるかを見届けなければならない.
曼荼羅
曼荼羅とはサンスクリット語で本質・真髄・中心を表すmandaと所有を表す接尾辞laからなる語で,「本質を所有するもの」の意味である.今日では,箱庭療法においても治療の転回点にこうした曼荼羅と思われる箱庭作品が現れることが知られている.
夢分析とインキュベーション
古代における夢の治療を検討している際になによりもまず最初に挙げるべきはギリシアのインキュベーションである.インキュベーションとは病者が聖地に籠もり,夢の訪れを待つことを意味している.その訪れた夢によって治療がもたらされる.治癒夢と呼ばれる夢を病者が見たときに,直ちに病者は治癒したといわれている.
夢の補償機能
ある態度がいきすぎると夢はそれを崩して全体的なバランスを回復しようとする.ユングはこのような夢の機能を「補償機能」と呼んでいる.
アートセラピー
人間の心身機能をもとに,イメージ表現を扱うアートセラピーとして,絵画療法,音楽療法,サイコドラマ,ダンス・ムーヴメント・セラピー,粘土療法,陶芸療法などがあり,個人~集団としての活用法がある.クライエントはセラピストと相互に向き合いながら,イメージのやりとりを通して行われる癒やしの行為そのものが芸術療法であるともいうことができる.作品のできあがりの良し悪し・出来不出来ではなく,表現したいと思い,表現していくプロセス,表現し始める前から表現し終わった後々まで,全ての表現過程を通して,やりとりとそのなかで行われるもの,受け止める存在にあることが重要である.
見立て
土居健郎は見立てについて「病気の種類ではなく,病気と診断されるこの患者の姿が浮かび上がってこないだろうか」と述べ,分類のための単なるレッテル貼りではなく,「患者の病状を正しく把握し,患者と環境の相互関係を理解し,どの程度まで病気が生活の支援となっているかを読み取ること」を目指すものであるとした.
バウムテスト
わが国においては「果樹」という教示はほとんど用いられず,「実のなる木を描いて下さい」もしくは「(1本の)木を描いて下さい」という教示が多い.「表現」については「表現とは絵画に何が描かれているかということよりも,絵画がどのように描かれているかということと関係がある」.バウムが「何を意味するか」という問いに対して,コッホは以下のような答えを用意している.「現象学的に言えば,その答えは,バウムの絵それ自身の本性から生じるものでなければならない.例えば,円という形は,境界で囲われ,閉じていて,周囲から分離したもの,と自然に記述されるだろう」.
解釈の出発点
温めたイメージを丁寧に言葉にしていくことが解釈の出発点となるが,その際に記述のレベルを区別しておくとよい.一次レベルの記述とは,主観を排した中立的な記述を指す.二次レベルの記述は,解釈の判断がそこに入ってくる.三次レベルの記述は,さらに概念的なもので,例えば対人関係とか自我のあり方などをそこに見ようとするものである.
風景構成法
風景構成法は中井久夫が1969年に開発し,山中康裕が1984,1995年の2回にわたり,この技法に関わる専門書を世に問い,その普及に努めた.河合隼雄が1965年にスイスからわが国に導入した「箱庭療法」を中井が統合失調症者に適用しようとした際に,かえって悪化・憎悪をきたすことがあったので,箱庭を彼らに適用する前に,その予備テストとして開発されたものである.
通常は川,山,田,道,家,木,人,花,動物,石を順に並べ,A4の画用紙にサインペンで風景を書いてもらう.また,11番目に付加として「何か描き加えたいものがあったら,自由に加えて,風景を完成させて下さい」といって,風景を完成させる.彩色が終わったら,まず,味わうように絵をながめ,その後,おもむろにいくつかの質問をする.それらの質問は特に決まっていないが,概ね次のようなことを訊くとよい.この風景の季節,天候,山の高さ,道はどこに至るか,川の流れの方向,人の性別,何をしているところか,動物は何かなど.
絵画療法
自由画というと一般の人は,何を描いてもいいわけだから,まさしく字義通り,1番自由な方法だと思われるかもしれない.ところが,通常の我々の対象,つまり,精神や神経やからだに問題を抱えている人たちや,問題行動を呈している子ども達にさっさと描いてくれる人は,まずいない.いわゆる自由画は,彼らにとっては不自由画だといってもおかしくない.絵画療法,いわば非言語的な方法を用いるのに1番効果的なのは言語的なコミュニケーションの苦手な人たちである.
箱庭療法
箱庭療法は1956年ドラ・マリア・カルフ女史によってSandspiel,Sandplay Therapyとして創始された心理療法で,日本には1965年に河合隼雄によって箱庭療法の名で紹介された.歴史的には,子どもの内的世界の表現であるという意味でThe WorldあるいはThe World Techniqueと呼ばれた技法がもとになっている.箱の大きさは内法が57cm×72cm×7cmと国際的に定められており,箱の内側が水色に塗られているため,砂を除くとそこに「水」を表現できるようになっている.
コラージュ
コラージュはフランス語の「張り付ける」を意味するcolleに由来している.コラージュ技法には,コラージュ・ボックス法,マガジン・ピクチャー・コラージュ法がある.コラージュ・ボックス法はカウンセラーやセラピストなどがあらかじめ切り抜きをして,箱にためておき,面接場面でクライエントにコラージュ・ボックスの中から自由に選び,自由に加工したりしながら制作してもらうものである.マガジン・ピクチャー・コラージュ法は雑誌やチラシなどの中から気に入ったものを選んで切り取り,台紙に貼り合わせている方法である.コラージュ・アクティヴィティには,既成の素材から選ぶ,切り抜く,画面上に構成する,糊付けする,の流れがある.
イメージと身体
「病は気から」という言葉があるが,我々は気持ちから身体の調子を崩すこともあれば,身体の不調により気持ちも左右されるなど,心と体は切っても切り離せない関係にある.
アレキシサイミア
アレキシサイミアの語源はギリシャ語のa(欠如),lexis(言葉),thymos(情動)といわれる説もある心身症の1つであり,日本では失感情症,失感情言語症などと訳されていた.アレキシサイミアのクライエントに共通して,
- 自分の感情や,身体の感覚に気づくことが難しい,あるいは鈍感である
- 感情を表現することが難しい.表現が乏しい.
- 自分の不満や不安を言語化できない
などの症状がみられる.ことわざに「もの言わざるは,腹ふくるるわざなり」というものがあるが,アレキシサイミアはこの1つの形ともいえる.過剰なストレスフルな状況下で,自分を抑え込む心理機制が働き,アレキシサイミアの状態になることもありうる.
催眠療法
催眠療法とは,催眠法と呼ばれる一定の方法・技法によって生ずる,操作的に定義される催眠現象を通じて行う心理療法のことを指している.
自律訓練法
ストレス緩和,心身症,神経症などに効果的である.自律訓練法は,自分自身でいつでもどこでも行える特徴があり,日常生活の多様な場面で行うことのできるセルフコントロール法として用いられている.
ロール・プレイング法
モレノの創始した心理劇は,固定観念に縛られない,原始言語としての身体行動を基本にしながら,できるだけ自由に振る舞える場を提供し,問題を具体的に提示してその場面をイメージし,登場人物をイメージし,その主題に関する即興劇を実際に演じてみる.心理劇は一般に監督,補助自我,演者,観客,舞台の5要素から構成され,ウォーミングアップ,ドラマ,討論の過程を経て行われる.
舞台という枠の中では,どんな表現も非難されることなく自由に演じられるということが大切である.学級の日常をよく知っている監督は,日常の観察,また必要に応じて調査を行って,主題を設定し,劇を演出し,討論の過程をまとめ,演者の感情や役割関係を明らかにしながらセッションを進めていく.観客もまたロール・プレイングを見ること聞くことを通じて,あるときは演者に共感し,あるときは反発し,演者とともにロール・プレイングを体験する.
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