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大学と社会(’08) 第8回

  • 投稿: 2010年11月16日 22:22
  • 更新: 2010年11月16日 22:22
  • 教育

第8回は「グローバル化する社会と大学」です.

グローバリゼーションは新しい現象ではなく,ローマ帝国やチンギス・ハーンの時代にもあったものであり,何が新しいかといえば,現象の移り変わりと波及の速度が増したことだという見方がある.近年では,ICTが日進月歩し,通信の高速化が進展する中で,経済・社会の相互依存度が地球規模で飛躍的に増した.それまでの「工業経済」では企業にとって最も重要な財が資本であったが,新たな情報化社会では知識が最重要の資産と見なされるようになっている.

2004年現在,世界の高等教育機関で学ぶ外国人留学生は270万人を数える.1975年には60万人であり,約30年間に4.5倍の規模に膨らんだ.2004年時点での受け入れ上位国は,アメリカに全体の22%,イギリス11%,ドイツ10%,フランス9%と続き,日本は4%である.

外国へ留学生を押し出す要因(Push要因)として考えられるのは,第1に,国内の高等教育が未発達ないし未整備で需要を満たせない場合,第2に,それ以外の理由で国内では教育の機会が得られない場合である.後者の例としては,マレーシアでマレー系住民を意図的に優遇するブミプトラ政策により,華人やインド系住民は進学機会を得づらくなった場合などがある.一方,外国人留学生を自国に引きつける要因(Pull要因)として,先進各国では高等教育の急速な発展により増大した公財政負担の軽減策として,各大学が留学生からの授業料収入への依存度を高めることが求められた国もあった.

1998年,パリでソルボンヌ宣言にドイツ・フランスを中心として,イギリス,イタリアを含む数カ国が署名した.この宣言は99年6月に,当時のEU加盟国15カ国を大きく上回る29カ国の高等教育担当大臣が署名したボローニャ宣言に発展継承された.

アジア太平洋地域でも同様の動きが起こり,アジア太平洋交流機構(UMAP)がそれである.UMAPは域内の高等教育機関または政府の代表などからなる任意団体である.1998年採択のUMAP憲章によれば,その目的は「アジア太平洋地域内の高等教育機関間の協力を推進するとともに,学生と教職員の交流を増やし,高等教育の質を高めることによって,域内諸国,諸地域の文化・経済・社会制度の理解をさらに深めること」である.

1995年に発足した世界貿易機関(WTO)に日本は発足時から加盟しているが,教育も加盟国間で締結された「サービス貿易一般協定」(GATS)に定められた貿易の対象と捉えられている.

また,オーストラリアはアジアを中心とする各国の大学との連携や自国大学の分校設置などの方式により,当該国の学生が自国にいながらにしてオーストラリアの大学の単位を履修できるオフショアプログラムを実施している.このほかに,提携を結んだ2国の大学間で,ある過程の修業年限の一部を自国で学び,残りを外国で学んで資格や学位を取得するトゥイニングプログラムも盛んである.

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