ホーム > タグ > 雑学

雑学

カラーユニバーサルデザイン

世の中には,一見すると健常人と区別が付かない障害を持っている人がいます.内部障害や内臓疾患がそれに該当し,UCももちろん見えない障害の1つと考えられます.そのため,色々と布教活動をしています.

目が見えない方は杖を持つというシンボルがあるのでわかりやすいのですが,耳が聞こえない方は特にそれといったシンボルはありません.そのため,難聴に対する理解も得られにくいです.

そして,今日は色弱について,啓蒙したいと思います.題材はカラーユニバーサルデザインです.

色弱とは

色弱とは,そもそもなんでしょうか.勉強前の私の解答は「色を正しく認識できない人」です.間違ってはいないと思いますが,正確な理解こそが助けとなります.CUDOの説明を噛み砕いて,以下に説明します.

ヒトの眼の網膜には,錐体という光を感じる視細胞があります.錐体には3種類あり,L錐体(赤錐体),M錐体(緑錐体),S錐体(青錐体)がある.この錐体は,血液型のように,生まれつき5つのタイプに分類されます.

  • C型 95% 一般色覚者
  • P型 1.5% 色弱者
  • D型 3.5% 色弱者
  • T型 0.001% 色弱者
  • A型 0.001% 色弱者

C型は3種類の錐体が全て揃っています.P型はL錐体がないか,または分光感度がM錐体に近くなります.D型はM錐体がないか,または分光感度がL錐体に近くなります.T型はS錐体がなく,A型は3種類のいずれかの錐体しかないか,またはいずれの錐体もありません.T型とA型は10万人に1人程度ですが,P型とD型は合わせて5%程度おり,20人いれば1人はいるという割合です.教室が30人規模であることを考えれば,1人は色弱者がいるであろう割合です.

では,これら色弱者にとって,色はどのように見えているのでしょうか.以下に例を挙げます.

色覚タイプの特徴より引用.

このように,赤と緑はそのように見えていないことがわかります.

ユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザインの7原則は以下の通りです.

  1. 公平な利用
  2. 利用における柔軟性
  3. 単純で直感的な利用
  4. わかりやすい情報
  5. 間違いに対する寛大さ
  6. 身体的負担は少なく
  7. 接近や利用に際する大きさと広さ

広義では,アフォーダンスも含まれるのではないでしょうか.

カラーユニバーサルデザイン

色についてのユニバーサルデザインが,カラーユニバーサルデザインです.色覚バリアフリーと言われることもあります.カラーユニバーサルデザインは次3つのポイントがあります.

  1. 出来るだけ多くの人に見分けやすい配色を選ぶ
  2. 色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにする
  3. 色の名前を用いたコミュニケーションを可能にする

カラーユニバーサルデザイン(CUD)

これらを満たせば,カラーユニバーサルデザインの資料を作れるでしょう.では,どうやるのか?この分野の専門家がそれを示しています.推奨配色セットは以下の通りです.

カラーユニバーサルデザイン推奨配色セットより引用.

このような配色セットがあれば,安心ですね.ちょっと見てみると,赤はRGBが(255,0,0)ではなく,(255,40,0)とちょっとGを混ぜているところがポイントのようです.赤,青,緑の錐体が正しく機能しないので,原色は使わないというのが原則でしょう.

また,色覚シミュレーションを行うツールもいくつかあるようです.身近なところでは,Adobe Photoshop/Illustrator CS4以降にその機能があるようです.

教育的配慮から

このように,教室全体の5%程度が色弱者である可能性があり,教育的配慮から,カラーユニバーサルデザインを採用することは望ましいと思われます.特に,教育機関ならではの問題も起こります.それは黒板です.黒板は黒い板とは書くものの,実際には緑色です.その黒板にチョークを使って板書をするわけですが,重要だと思う箇所を何色のチョークで書くでしょうか?一般的に考えると,赤でしょう.しかし,先に示したように,赤と緑は色弱者にとって区別が付きにくいです.つまり,この組み合わせで書かれると,何も書いていないように見えるのです.こんなものは,強調でも何でもありません.現在では,カラーユニバーサルデザイン対応のチョークも販売されています.ホワイトボードの場合では,黒と赤,緑と赤,の組み合わせは見分けづらいようです.

では,プロジェクタを使う場合はどうでしょう.同じです.同じ配慮が必要です.さらに,レーザーポインタを使う場合,赤色レーザーポインタは区別が付かないそうです.そこで,緑のレーザーポインタが推奨されています.それから,もっと注意しなくてはいけないのは,グラフです.一般的に,プレゼンなどで用いるグラフは色の違いで視覚的に見せることが多いです.ところが,カラーユニバーサルデザインを考えたとき,その配色は適切でしょうか?福島県のCUDガイドでは折れ線グラフの実例を挙げて,その問題点と対策を示しています.これらをまとめた福島県のカラーユニバーサルデザイン ガイドブック(PDF注意)がとても参考になります.

このように,教員は講義資料や配付資料などの配色に十分に気をつける必要があるでしょう.

まとめ

教員の方々は,経験的にカラーユニバーサルデザインを取り入れていると思いますが,まだまだ駆け出しの私にとっては,学ぶことばかりです.教育をするにあたって,多くのことを勉強したつもりではありますが,まだまだ全然足りておらず,大学教員として教授職に相応しいとは言えません.まったく勉強の足らない自分に苛立ちを感じる日々です.無力です.

参考

抵抗の電気用図記号が変わっていた件

中学校の理科1分野で皆さんは電気回路について学修しているはずです.オームの法則とか聞いたことありますよね?「理科は苦手!」っていう人でも,以下の回路ぐらいは読めるんじゃないかと思います.

光アートの世界:LEDによる光アート講座その4より引用.

簡単なLEDを光らせる回路です.だがしかし,これが今の中高生,果ては大学生までわからないかもしれないのです!なんという教育崩壊!ゆとり教育の弊害!

いや,違うんです.電気用図記号はJISで策定されていて,上図のような電気用図記号はJIS C 0301で規定されています.しかし,このJIS C 0301は1997年から1999年にかけて策定されたJIS C 0617によって廃止されました.このJIS C 0617は国際規格であるIEC 60617を基に作成されており,国際準拠になっております.そして,JIS C 0617およびその基となっているIEC 60617では,抵抗を含め,電気用図記号が変わっているのです!(だだだーん!)新旧の抵抗の電気用図記号の比較はこちらから.そして,新旧JISによる電気用図記号はこうなった!

CiNii 論文?–? 電気用図記号のJIS改正について : JIS C 0617「電気用図記号」の概要より引用.

抵抗の他にもいろいろな記号が変わっていて,私に影響がある範囲だと,ダイオードとNPN型トランジスタも変わっています.コンデンサは許容範囲内かな.

JISが変更になっているので,当然ながら教科書もそれに準拠し変更されており,今現在の教科書では,JIS C 0617が使われています.この移行時期が定かではなく,2002年,2004年という複数の情報があり,どれが正しいのかは未確認です.しかしながら,とにかく今の中高生はJIS C 0617で習っているので,JIS C 0301の記号を出しても「???」となる可能性が高いのです.ただし,JISは拘束力はないので,往々にしてJIS C 0301の記号があちこちで使われています.

かくいう私も今日の今日まで知りませんでした.JIS C 0617の抵抗記号で回路図を描いてくる学生がいて,「横着してるな」と思って疑わないほどでした.これは由々しき事態です!中高の先生は間違いなくJIS C 0617に準拠して教えているでしょう.その際に,JIS C 0301に触れて「このような記号を使うこともあります」と説明しているかもしれません.しかしながら,大学教員(電気回路が専門の人は別として)の多くはこれを知らない可能性が非常に高いです.これは良くない.「大学教員は浮世離れしている」とか「大学教員は自分の専門しか興味がない」とか「大学教員は教育に興味はない」などとあることないこと言われてしまう材料です.正さなくてはならない!今こそ,正さなくてはならない!正しい知識で,わかりやすい教育を!

Home > タグ > 雑学

アフィリエイト

Return to page top