- 投稿: 2012年07月10日 20:53
- 更新: 2013年03月04日 21:43
- 教育
世の中には,一見すると健常人と区別が付かない障害を持っている人がいます.内部障害や内臓疾患がそれに該当し,UCももちろん見えない障害の1つと考えられます.そのため,色々と布教活動をしています.
- ハートプラス,はじめました – 4403 is not prime.
- ハートプラス缶バッジを作りました – 4403 is not prime.
- 見えない障害バッジ – 4403 is not prime.
目が見えない方は杖を持つというシンボルがあるのでわかりやすいのですが,耳が聞こえない方は特にそれといったシンボルはありません.そのため,難聴に対する理解も得られにくいです.
そして,今日は色弱について,啓蒙したいと思います.題材はカラーユニバーサルデザインです.
色弱とは
色弱とは,そもそもなんでしょうか.勉強前の私の解答は「色を正しく認識できない人」です.間違ってはいないと思いますが,正確な理解こそが助けとなります.CUDOの説明を噛み砕いて,以下に説明します.
ヒトの眼の網膜には,錐体という光を感じる視細胞があります.錐体には3種類あり,L錐体(赤錐体),M錐体(緑錐体),S錐体(青錐体)がある.この錐体は,血液型のように,生まれつき5つのタイプに分類されます.
- C型 95% 一般色覚者
- P型 1.5% 色弱者
- D型 3.5% 色弱者
- T型 0.001% 色弱者
- A型 0.001% 色弱者
C型は3種類の錐体が全て揃っています.P型はL錐体がないか,または分光感度がM錐体に近くなります.D型はM錐体がないか,または分光感度がL錐体に近くなります.T型はS錐体がなく,A型は3種類のいずれかの錐体しかないか,またはいずれの錐体もありません.T型とA型は10万人に1人程度ですが,P型とD型は合わせて5%程度おり,20人いれば1人はいるという割合です.教室が30人規模であることを考えれば,1人は色弱者がいるであろう割合です.
では,これら色弱者にとって,色はどのように見えているのでしょうか.以下に例を挙げます.
色覚タイプの特徴より引用.
このように,赤と緑はそのように見えていないことがわかります.
ユニバーサルデザイン
ユニバーサルデザインの7原則は以下の通りです.
- 公平な利用
- 利用における柔軟性
- 単純で直感的な利用
- わかりやすい情報
- 間違いに対する寛大さ
- 身体的負担は少なく
- 接近や利用に際する大きさと広さ
広義では,アフォーダンスも含まれるのではないでしょうか.
カラーユニバーサルデザイン
色についてのユニバーサルデザインが,カラーユニバーサルデザインです.色覚バリアフリーと言われることもあります.カラーユニバーサルデザインは次3つのポイントがあります.
- 出来るだけ多くの人に見分けやすい配色を選ぶ
- 色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにする
- 色の名前を用いたコミュニケーションを可能にする
これらを満たせば,カラーユニバーサルデザインの資料を作れるでしょう.では,どうやるのか?この分野の専門家がそれを示しています.推奨配色セットは以下の通りです.
カラーユニバーサルデザイン推奨配色セットより引用.
このような配色セットがあれば,安心ですね.ちょっと見てみると,赤はRGBが(255,0,0)ではなく,(255,40,0)とちょっとGを混ぜているところがポイントのようです.赤,青,緑の錐体が正しく機能しないので,原色は使わないというのが原則でしょう.
また,色覚シミュレーションを行うツールもいくつかあるようです.身近なところでは,Adobe Photoshop/Illustrator CS4以降にその機能があるようです.
教育的配慮から
このように,教室全体の5%程度が色弱者である可能性があり,教育的配慮から,カラーユニバーサルデザインを採用することは望ましいと思われます.特に,教育機関ならではの問題も起こります.それは黒板です.黒板は黒い板とは書くものの,実際には緑色です.その黒板にチョークを使って板書をするわけですが,重要だと思う箇所を何色のチョークで書くでしょうか?一般的に考えると,赤でしょう.しかし,先に示したように,赤と緑は色弱者にとって区別が付きにくいです.つまり,この組み合わせで書かれると,何も書いていないように見えるのです.こんなものは,強調でも何でもありません.現在では,カラーユニバーサルデザイン対応のチョークも販売されています.ホワイトボードの場合では,黒と赤,緑と赤,の組み合わせは見分けづらいようです.
では,プロジェクタを使う場合はどうでしょう.同じです.同じ配慮が必要です.さらに,レーザーポインタを使う場合,赤色レーザーポインタは区別が付かないそうです.そこで,緑のレーザーポインタが推奨されています.それから,もっと注意しなくてはいけないのは,グラフです.一般的に,プレゼンなどで用いるグラフは色の違いで視覚的に見せることが多いです.ところが,カラーユニバーサルデザインを考えたとき,その配色は適切でしょうか?福島県のCUDガイドでは折れ線グラフの実例を挙げて,その問題点と対策を示しています.これらをまとめた福島県のカラーユニバーサルデザイン ガイドブック(PDF注意)がとても参考になります.
このように,教員は講義資料や配付資料などの配色に十分に気をつける必要があるでしょう.
まとめ
教員の方々は,経験的にカラーユニバーサルデザインを取り入れていると思いますが,まだまだ駆け出しの私にとっては,学ぶことばかりです.教育をするにあたって,多くのことを勉強したつもりではありますが,まだまだ全然足りておらず,大学教員として教授職に相応しいとは言えません.まったく勉強の足らない自分に苛立ちを感じる日々です.無力です.
参考
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